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特定調停手続きとは?メリット・デメリットと必要な準備を紹介

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この記事の監修
株式会社リスタートスタイル 代表取締役 / 廃業コンサルタント 西澤 佳男 (にしざわ よしお)

起業3回廃業2回うち民事再生1回、双子のパパ。
ベンチャーの起業・複業・廃業の領域で「社長のサバイバル」を支援しています。

資金繰りの失敗や経営の悪化によって債務超過の恐れがある場合、廃業やM&Aという選択肢の他に、債務者の経済再生を図れる特定調停手続きという手段があります。

これまで会社の債務整理において特定調停を活用するケースは多くなかったのですが、最近では運用方法が見直され、経営を諦めるにはまだ早い企業の事業主が特定調停手続きを決断する動きがみられています。

この記事では、特定調停手続きとは何かを知っていただける基礎知識をご説明した後、メリット・デメリットや必要な準備について詳しくご紹介していきます。

特定調停手続きとは?

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時代の変化とともに企業にも新しいビジネスの形が求められますが、変化に適応できず業績が低迷してしまい、廃業や倒産に至る企業も少なくありません。

特定調停は、経営を継続したいにもかかわらず債務の返済が追いつかず頭を抱えている事業主の救済となる手続きです。

具体的にどのような手続きなのか、その概要をご紹介していきます。

特定調停の概要

特定調停とは、債務完済の計画を立てられず、債務超過の恐れがある債務者(特定債務者)の経済的再生を支援するために、金銭債務の利害関係を調整することを指します。

近い将来、経済的に破綻する可能性のある特定債務者であれば、個人・法人・事業者という属性を問わずに活用できます。

特定調停手続きが合意に至った場合、調書に記載された内容が確定判決と同じ効力をもつため、決められた債務返済以外の取立をされることがなくなります。

専門知識を持った士業者以外でも、用意された申立書のひな形で申請が可能となっており、申立ての費用も安いことから利用するハードルが低いという特徴があります。

特定調停と任意整理の違い

よく比較されるのが特定調停と任意整理です。

特定調停は、債務者が主体で裁判所が仲裁役となり、債務者と債権者で平和に債務整理を終えられるよう支援をする公的な手続きです。

一方で任意整理は、債務者の代理として弁護士に手続きを依頼することとなり、弁護士が債権者との和解交渉を進めていく債務整理の手段となります。

どちらの手続きを利用しても決定した返済額以上の取立をされることはなくなりますが、任意整理は弁護士に依頼して間もなく取立が止まることに対し、特定調停は裁判所に必要書類を提出して申立を行う必要があるため、取立が止まるまで時間を要することがあるので注意が必要です。

特定調停手続きのメリット・デメリット

経営回復に向けた債務整理の手段として、特定調停を選ぶメリットがどこにあるのか気になる方は多いと思います。

特定調停手続きを進める前に知っておきたい、メリットとデメリットをご紹介します。

メリット

  • 債権者からの取立が止まる
  • 債務者が主体となって手続きを進められる
  • 債権者と直接交渉する必要がない
  • 手続きの費用が安い
  • 一部の財産を手元に残せる
  • 強制執行を停止できる可能性がある
  • 資格を制限されることがない
  • 債務の種類に関わらず利用できる

特定調停は裁判所が仲裁役となるため、債務者は債権者と直接交渉する必要がなく、精神的な負担は軽くなります。

また、最大のメリットとなるのが士業専門家に依頼する必要がないため手続きの費用が安いという点で、一社あたり500円の手数料と書類の郵送費用だけで済ませることができます。

整理する債務を選べるため、一部の財産を手元に残すなどの調整も可能です。

デメリット

メリットが多数ある特定調停ですが、デメリットもしっかり理解した上で手続きを検討しなければなりません。

  • 平日に裁判所に出頭する必要がある
  • 申立書など必要書類の作成は債務者が行う
  • 取立が止まるまで時間を要する
  • 成功率が低い
  • 返済能力次第で調停が取り下げられる

最大のデメリットとなるのが、専門家に頼らず個人で進める手続きになるため、成功率がかなり低いという点です。

手続きの申請をすることができても思うように債務の減額ができず、返済能力がないと判断された場合は個人再生や破産手続きに移行してしまうこともあります。

費用が安いというメリットはありますが、デメリットがかなり重いため、任意整理や個人再生を選ぶ方も多くいます。

特定調停手続きの必要書類と費用

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特定調停のメリット・デメリットを理解した上で手続きを進める方は、以下の必要書類と費用を事前に用意しておきましょう。

必要書類は個人か事業主かで異なるため、書類をダウンロードする前に必ず確認しましょう。

  • 特定調停申立書(正本・副本を相手ごとに作成)
  • 財産状況がわかる明細書・特定債務者を証明する資料
  • 関係権利者一覧表
  • 申立手数料(収入印紙:1社につき500円分)
  • 予納郵便切手(1社につき430円分)
  • 資格証明書

必要書類のダウンロードはこちら(最高裁判所)

特定調停手続きの流れ

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ここからは、特定調停手続きの流れを以下のステップでわかりやすくご説明していきます。

  1. 簡易裁判所で特定調停の相談をする
  2. 特定調停申立書を作成する
  3. 特定調停の申立てをする
  4. 債権者に通知が届く
  5. 【第1回調停期日】債務者と調停委員で話し合う
  6. 【第2回調停期日】債務者、債権者、調停委員で話し合う
  7. 調停調書に従って返済をする

【ステップ1】簡易裁判所で特定調停の相談をする

特定調停の申立ができるのは、債権者の住所がある地区を担当する簡易裁判所となります。

まずは該当の簡易裁判所に特定調停を行いたい旨を伝えてみましょう。債権者が複数いる場合は、件数の多い地区の簡易裁判所に相談し、わからない場合は最寄りの簡易裁判所の窓口に伝えてみる事をお勧めします。

【ステップ2】特定調停申立書を作成する

申請に必要となる特定調停申立書を最高裁判所の公式ホームページよりダウンロードして作成しましょう。

また、先述の必要書類もこの時点で準備しておきましょう。

特定調停申立書のダウンロードはこちら(最高裁判所)

【ステップ3】特定調停の申立てをする

該当の簡易裁判所に申請書類・必要書類を郵送して申立てをしましょう。

手数料となる収入印紙や郵便切手もあわせて提出しましょう。

【ステップ4】債権者に通知が届く

債務者の申立てが適法に至った場合、裁判所から債権者に特定調停開始の通知が送られます。

通知が送られた時点で初めて債務の取立が停止されるため、債務者は取立を迫られる窮屈な生活から解放されます。

【ステップ5】第1回調停期日に債務者と調停委員で話し合う

調停委員が間に入って話し合いが進められます。

基本的に債務者だけが呼び出され、今後の返済計画や返済能力などの確認が行われます。

【ステップ6】第2回調停期日に債務者、債権者、調停委員で話し合う

2回目の調停期日には債権者も呼び出されます。

調停委員が間に入るため直接交渉をする必要はなく、利息制限法に基づいて算出された残債務額が確定し、毎月の返済計画の目処を立てた上で返済条件の調整が行われていきます。

双方合意に至った後は、調停調書に内容が記されます。

【ステップ7】調停調書に従って返済をする

裁判所から郵送された調停調書、または決定書に従って銀行振込などで残りの債務の返済を行っていきます。

調停調書と決定書は確定判決と同じ効力があるため、これ以上の取立をされることがなく、安心して返済を進めていくことができます。

廃業支援型特定調停スキームについて

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日本弁護士連合会は、中小企業がスムーズな廃業・清算を望むケースが増加していることを受けて、特定調停手続きを活用して廃業や清算を支援する目的の「廃業支援型特定調停スキーム」を策定しました。

廃業支援型特定調停スキームの概要

廃業支援型特定調停スキームは、債務超過の可能性がある企業に対して債務の抜本的な整理を手助けし、債務者がスムーズに廃業、清算できるような支援を行っていくものです。

取引先へのダメージを最小限に抑えられ、柔軟な返済計画を策定できることが廃業支援型特定調停スキームのメリットとなっていますが、事前に金融機関と調整を行う必要もあります。

廃業支援型特定調停スキームの要件

廃業支援型特定調停スキームを利用できる企業の要件は、以下のようになっています。

  1. 破産につながる事実、または廃業につながる原因となる事実がある
  2. 保証人が経営者保証GLの要件を満たしている(保証債務を整理する場合)
  3. 債権者が金融機関である
  4. 債務整理に相応しい内容である
  5. 法的整理に相応しい内容である
  6. 経済合理性がある
  7. 優先債務などの弁済にあたる
  8. 事業者の弁済計画案に必要事項が記載されている
  9. 保証人の弁済計画案に必要事項が記載されている(保証債務を整理する場合)

廃業支援型特定調停スキームは金融機関が相手の場合に適用されるものであり、手続きを始める前に金融機関の意思を確認することを忘れてはいけません。

新型コロナウイルス感染症の影響によって廃業を決断する企業が増えている今、廃業を視野にした特定調停は経営者の救済処置のひとつとなっています。

廃業を視野に入れた特定調停を検討されている方は、「特定調停スキーム利用の手引」をチェックしてみてください。

まとめ

特定調停手続きの基礎知識や実際の手続きの流れ、そして廃業支援型特定調停スキームについてご紹介しましたが参考になりましたか?

経済再生を目指す中小企業者は、どん底の状態から再起するためにあらゆる手段を駆使して経営を安定化させようと試みます。特定調停はその手段のひとつですが、個人で進めた場合の成功率は低く、弁護士などの専門家の力を借りることが成功の鍵となっています。

そこで皆さんにおすすめしたいのが、廃業、事業承継から再創業支援まで一気通貫でサポートを行っている「廃業支援センター」です。

廃業支援センター」は、過去に廃業を経験した廃業コーディネーターが在籍する廃業支援に特化した専門企業で、事業主様の現在の状況を細かくヒアリングし、円滑な廃業や事業承継に導ける的確なサポートができます。

事業の継続が難しくなり、廃業・M&A・特定調停・任意整理という複数の選択肢で悩んでいる方は、ぜひこの機会に「廃業支援センター」までお気軽にご相談ください。

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