廃業を知る

会社の解散清算の手続きの流れや手続き方法を司法書士が解説

会社 解散

 

会社の解散や精算は、経営者が手掛ける多くの仕事の中でも、めったに経験するものではありません。いざ、始める際に「こんなはずでは無かった」「急に言われても」といった事がないように、経営者が知っておくべき解散・精算に関わる手続きを解説致します。
注)一般的な手続きの主な一例であり、会社の機関設計や具体的なケースにより手続等が異なってきますので、ご了承ください。

会社が解散するには法律で定められた条件がある

会社を解散するには、法律で定められた以下の解散する7つの条件が必要になり、それらを満たした場合に解散することが可能です。

会社の解散条件

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散事由の発生
  3. 株主総会の決議
  4. 合併により会社が消滅する場合
  5. 破産手続開始の決定
  6. 裁判所による解散命令
  7. 休眠会社のみなし解散

一般的な会社の解散から清算の手続きと流れ(株主総会の決議による解散)

会社 解散

自らの意思決定で、自力で会社を廃業する最も一般的な手続きと言えます。
会社単独で株主総会での特別決議にていつでも解散決議ができます。
但し、この手続きは、主に負債(借入金や未払金等)を消滅(返済や債権者の債権放棄等)させることができる予測が立つ場合によく用いられます。負債を消滅できず、債務超過の疑いがあると認められた場合には、特別清算等の裁判所の監督下での手続に移行する場合もあります。
したがって、このような解散方法は、資産状況の良い会社や資産状況が良くなくても債権者と話し合いで解決できる会社や従業員や対外的な債権者が少ない小さな同族会社などが多いものと思われます。

1 株主総会における解散決議・清算人の選任決議

・取締役会決議
株主総会の招集を決定するために取締役会を開催します。これに基づいて総会日の1週間前までに、株主に対してその通知をします。
・解散決議(特別決議)
会社はいつでも定時株主総会又は臨時株主総会の特別決議によって、会社を解散させることができます。コロナ禍の現在では株主総会を開催することなく、いわゆる書面決議(総株主の同意が必要)も可能です。
特別決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行います。
書面決議とは、取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす制度です。
・清算人選任決議(普通決議)
会社は、解散決議と同時に清算人の選任決議をします。
清算人は、法人や成年被後見人、被保佐人、当該会社の監査役その他法令で定められた者を除き就任することができますので、小さい同族会社では、代表取締役であった者(代表取締役が亡くなって事業を廃止する場合には、その親族など)がなるのが多いかと思われます。
・定款変更決議(特別決議)
解散すると取締役が退任し、清算人が就任します。また監査役の設置も任意になりますので、機関設計に関連する条項を変更することになります。
また、事業の停止に伴い本店移転や商号変更をする必要も生じてくることもあり、その場合定款変更をすることもできます。

2.現務の結了・清算事務の開始

会社 解散

・現務の結了:解散後は清算の目的の範囲内で存続しますので、全事業を停止し、取引関係を終了させます。
・清算事務の開始:まずは解散時の会社財産の調査をする必要があります。その後、解散時の財産目録と貸借対照表を作成し、それを株主総会で承認を受ける必要があります。

3.解散及び清算人の登記

・解散決議から2週間以内に法務局へ登記を申請します。登記完了後、会社の登記事項証明書及び清算人の印鑑カード・印鑑証明書を取得します。
・登記に必要な書類
①定款
②株主総会議事録
③株主リスト
④清算人の就任承諾書
⑤清算人の個人の印鑑証明書(3か月以内)
⑥印鑑届
⑦印鑑カード交付申請書
・必要に応じて解散登記の完了した会社登記事項証明書を諸官庁へ提出(届出)します。

4.解散時の財産目録と貸借対照表の作成及び株主総会での承認決議

・承認決議(普通決議)
解散後、清算人は、会社の財産を調査し、解散時の財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会において、その承認を受ける必要があります。
その承認決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行います。

5.債権申出公告及び知れたる債権者への通知

・官報公告掲載
清算株式会社は、解散後遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に1回公告します。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができません。この期間にその債権の申出をしなかったものは、清算から除斥されます。但し、知れたる債権者は、申し出が無くても清算から除斥されません。
・知れたる債権者への通知
清算株式会社は、知れている債権者には、各別にこれを催告します。

6.債権回収・会社財産処分・債務弁済

・債権回収:未収金、売掛金や貸付金などの債権を回収します。
・会社財産処分:財産を換価し現金化します。
・債務弁済:原則、債権申出期間経過後に未払い金や借入金などを支払います。

7.清算事務年度の決算承認の株主総会決議

・清算事務年度が到来した場合、計算書類の承認決議(普通)をする必要があります。

8.残余財産の分配

・すべての負債を消滅させた後に残余財産がある場合には、原則、現金化して金銭にて分配します。

9.清算事務報告書の作成と株主総会の承認決議

・清算事務報告の承認決議
清算事務が全て終了した場合、決算報告(清算事務報告書)を作成し、株主総会で承認を受けます。この承認があったときは、任務を怠ったことによる清算人の損害賠償の責任は、免除されたものとみなされます。但し、清算人の職務の執行に関し不正の行為があったときは、この限りではありません。

10.清算結了登記

・清算事務報告の承認決議から2週間以内に法務局に清算結了登記を申請します。
登記完了後、会社の登記事項証明書は閉鎖されますので、会社の閉鎖登記事項証明書を取得します。
・登記に必要な書類
①清算事務報告書(決算報告書)
②株主総会議事録
③株主リスト
・必要に応じて清算結了登記の完了した会社閉鎖事項証明書を諸官庁へ提出(届出)します。

11.清算結了までの期間

会社 解散

・清算手続きが完全に終了するまで、官報掲載と債権申出期間2か月を考慮すると最短3か月前後~長いものだと数年(清算事務に時間がかかる場合など)かかるケースもあります。

会社解散から清算にかかる費用

続いて会社の解散に必要な費用について解説します。

主な費用は以下の表の通りです。

費用名 金額
登録免許税 解散と清算人の選任登記:39,000円

清算結了の登記:2,000円

官報公告費用 約32,000円
その他手続きにかかる費用 登記事項証明書の取得:数百円~数千円

株主総会開催費用:数万円~数十万円

専門家への依頼費用 数万円~数十万円

※規模や依頼する手続きによって異なる

 

会社解散から清算の手続きは専門家に依頼する

会社解散の手続きは、やろうと思えば自分で行うことも可能です。
しかし、会社解散の手続きは、様々な書類を準備したり、法務局など官公庁での煩雑な手続きが必要になるため、スムーズに進めたい場合は専門家に依頼するのがおすすめです。
弁護士や税理士、司法書士など、職種や状況によって依頼すべき相談先は異なります。

弁護士に依頼する場合

会社に多額の債務があり、特別清算や破産手続きをとらざるを得ない場合は、裁判所での手続きや金融機関・取引先などの債権者との交渉が必要になるため、弁護士に相談しましょう。
法的な手続きや交渉が必要なこれらの手続きは専門家以外には難しく、慎重に行う必要があります。

税理士に依頼する場合

顧問税理士がいる場合は、顧問税理士に解散手続きを依頼できます。
顧問税理士は担当企業の経営状況に精通しているため、顧問税理士がいる場合はまずは顧問税理士に依頼することがおすすめです。

税理士に解散手続きを依頼する場合は、解散・清算の際の登記手続きに関しては司法書士に依頼する必要があります。

司法書士に依頼する場合

会社の解散などの登記申請は司法書士に依頼することが可能です。
役所への届出等ご自身で動ける範囲での手続きは行ったうえで、法務局への登記申請や書類作成のみを司法書士に依頼すれば、費用を抑えることが可能です。
ただし、司法書士は税務業務を実施しないので、会社の確定申告書の作成などは依頼できません。

まとめ

このように株式会社の解散から清算には多くの手続きが必要になってきます。また、利害関係者の同意が無ければ手続きを進める事も出来ません。そして手続きに関わる費用についても事前に把握しておく必要があります。コロナ禍で会社の事業継続性に不安がある場合は、ためらわずに専門家に相談をする事をお勧めします。早めに決断する事によって、複数の選択肢のなかから社長にとって最適な会社の閉じ方を選ぶ事が可能になります。

著者プロフィール

J-PARTNERS司法書士総合事務所 代表司法書士 覚張民人(がくはりたみと) 2002年8月司法書士登録。 当事務所は、主に会社・法人登記を中心として、特に解散・清算事務や新規設立を含むM&Aやストックオプション、種類株式などの資本政策を得意とする事務所です。廃業手続きについては、他の専門家と連携しながら、当該経営者の実情に寄り添って、最適な手続を提供支援し、経営者や従業員の再スタート(再起業)も含めて総合的に支援しています。

\ご相談は無料で承ります/