会社が倒産したら従業員はどうなる?通知のタイミングや注意点について
- この記事の監修
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株式会社リスタートスタイル 代表取締役 / 廃業コンサルタント 西澤 佳男 (にしざわ よしお)
起業3回廃業2回うち民事再生1回、双子のパパ。
ベンチャーの起業・複業・廃業の領域で「社長のサバイバル」を支援しています。
経営者として「もし会社が倒産してしまったらどうすればよいのか」と考える機会も出てくるかもしれません。特に、解雇の通知や給料や退職金についてなど従業員に向けてどのように対応すべきかは最も頭を悩ませるところです。本記事ではそれらの正しい対応方法や、M&Aという選択肢についてご紹介していきます。
Contents
会社が倒産したら、従業員は解雇に
もし会社が倒産することになれば、法人が消滅するため基本的にすべての従業員を解雇することとなります。経営者側も苦しい選択を迫られる場面ですが、生活にも影響が受ける従業員には誠意ある対応が必要です。
まず従業員を解雇する場合には労働基準法によって、30日前までに「解雇予告」を行わなければならないことが定められています。これを怠ってしまうと30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。また、14日前に解雇予告を出した際には30日に満たない日数(16日分)の平均賃金を支払う必要があります。
解雇予告は会社側がただ書面で告げればよいだけでなく、それと同時に倒産に至った経緯などの説明責任が求められます。解雇理由証明書などの作成を依頼された場合においても誠実に対応していくことが重要です。
(参照元:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html
倒産したら従業員の給料や退職金はどうなる?
業績が悪化し、資金繰りがうまくいかないために倒産に至るケースがほとんどです。しかし、雇用者は従業員に対して未払いの給与や退職金を支払う義務があります。これは原則として取引先や債権者への支払いより優先しなければなりません。会社に資産が残っている場合は、倒産手続中であっても未払いの給与・退職金を用意する必要があります。
十分な資産が残っていないケースでは、後述の「未払賃金立替払制度」を利用することになります。このように、従業員への未払い給与や退職金は優先的債権ではありますが、どれだけ支払えるかは個々の状況に応じてさまざまです。倒産や廃業を選択する段階で、破産・民事再生などの手続きに備える必要があるのです。
会社をたたむ際には、従業員の給与の支払いや退職金や税金・社会保険料の支払いなど思いの他に資金が必要になってきます。法的な整理をする、廃業するにせよ準備を怠ると想定通りに手続きを進められなくなってしまいます。廃業すべきか、事業を継続すべきか迷った際には当社の「廃業無料診断」をご利用下さい。今すぐに相談したい方には電話相談も承っています。
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経営者が行うべき従業員への対応
では、具体的に経営者が従業員に対して行うべきことはどのようなことなのでしょうか。ここでは前述の内容を踏まえて、経営者がとるべき対応について解説します。
従業員に倒産を通知するタイミング
一般的には、破産手続きを始める前に従業員を解雇するケースがほとんどです。大きな理由としては、早めに解雇予告を出した方が、労働債権が抑えられることに加えて、退職に際しての手続きや再就職の準備など、従業員の時間的余裕を増やせることが挙げられます。ただ解雇通知が早過ぎると、取引先との関係など業務に支障をきたすおそれもあるため注意した方がよいでしょう。
倒産が決まったら、早い段階で従業員にそれまでの経緯と今後の対応について説明し、解雇予告を出します。なるべくすべての従業員がそろうタイミングを作るようにして、書面とともに解雇を通知します。このとき、私物の持ち帰りや保険証、預けていた備品などの返還なども進めていきます。
転職先の紹介や給付金制度を案内する
解雇されることで従業員は収入源を失ってしまうことになります。すべての従業員に再就職先を紹介するのは難しいですが、経営者側は会社で培った人脈などを生かして、できるだけ希望に沿った新たな就職先を紹介できるように努力していかなければなりません。就職先が決まることで、解雇の手続きもスムーズに進めることが可能となります。
さらに解雇する従業員に対して、雇用保険に加入している場合は失業保険制度、会社が賃金を支払えない場合には未払賃金立替払制度があることも説明しておくと親切です。雇用保険の加入期間や給与によっても受け取れる金額は異なりますが、これらの制度を利用すればしばらくの間、生活費等が確保できます。
会社が倒産したら受けられる社会保障制度
ここでは前述の「未払賃金立替払制度」と「失業保険制度」の仕組みについて詳しく解説します。従業員から説明を求められることもあるため、理解しておいた方がよいでしょう。
未払賃金立替払制度
会社に十分な資産が残っておらず、従業員に対して未払い給料や退職金を支払えないというケースにおいて、従業員は「未払賃金立替払制度」を利用できます。これは独立行政法人労働者健康福祉機構が実施しており、雇用者に代わって一定の範囲内で国が未払い金額を負担するというシステムです。
受給条件としては、労災保険が適用される会社で1年以上の事業活動の実績があることが挙げられます。また破産手続き申請日か事実上の倒産日の6ヶ月前の日から2年の間に退職した人が対象です。
注意すべき点は、立て替え対象となるのは給与と退職金のうち未払いとなっているもののみで、ボーナスなどの賞与は含まれません。未払い金額が2万円に満たない場合も対象外です。金額は最大でも未払い金額の8割で、退職時の年齢によっても上限があります。
(参照元:独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)「未払賃金の立替払事業」
https://www.johas.go.jp/tabid/687/Default.aspx
失業保険制度
会社を退職したときや解雇されたとき、いわゆる失業中に受給できるものに国の雇用保険の基本手当(失業給付)があります。通称で「失業保険」と呼ばれることもあります。職を失った間も給付金を受け取ることで負担を軽減し、再就職に向けての活動を支援する制度です。雇用保険に一定の期間以上加入していれば受給可能で、離職票をハローワークに持参して申請手続きを行います。
失業保険は2つに大別されます。自己都合による退職か、会社の都合で職を失ったかで分けられ、倒産による解雇は後者の「会社都合退職」となります。会社都合退職では、失業した当日からさかのぼった1年間で、雇用保険に通算6ヵ月以上加入していれば受給資格があります。申請から受給までに必要な待機期間は自己都合の退職だと3ヶ月ですが、倒産の場合だと1週間であるため非常にスピーディに対応してもらえます。
受給金額は元の給与の50~80%です。給与水準が低いほど高い給付率に設定されており、加入期間や年齢によって変わりますが、最低でも90日間は給付を受けられます。最大は330日間で、雇用保険に20年以上加入していた45歳以上60歳未満の方が対象となります。
(参照元:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html)
廃業ではなくM&Aという選択肢も
かつて、M&A(企業の合併・買収)は大企業が行うイメージが強いものでした。しかし最近では、中小零細企業においても積極的にM&Aを選ぶケースも増えています。会社の技術や伝統を存続できるだけでなく、従業員の雇用を守る上でも非常に有効な手段です。経験豊富な従業員がもつ知識や培ってきた技術を、そのまま生かすことができれば社会的な人的資源の有効活用にもつながります。経営者にとっても従業員の解雇という経営者の心理的負担やコスト、リスクを大幅に軽減できます。また、会社名やブランドを残せる可能性も高いでしょう。
倒産を招かないための廃業や、後継者不足を理由とした廃業を考える前に、M&Aという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。
2022年版「小規模企業白書」では2021年の休廃業・解散件数は、4万4,377件と報告されています。このデータによればそのうち半数近くが黒字のまま廃業をしていると言われています。廃業や解散が頭に浮かんだら、事業譲渡やM&Aをまず検討する事をお勧めします。赤字であっても買い手がついて事業や従業員が守られるケースも数多くあります。廃業するか、会社を売るかで悩んだ際は「廃業無料診断」をお使い下さい。今すぐ相談したい方は電話での相談も承っております。
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●まとめ
会社が倒産したら、従業員を解雇し未払いの給与や退職金を支払わなければなりません。支払いが厳しい場合は、従業員は国の社会保障制度を利用して生活費などを確保する必要があります。経営者側はこれらの情報提供や再就職先の紹介などを行っていく必要があるのです。
倒産・廃業にはさまざまな手続きや知識が要ります。またM&Aにおいて従業員の雇用や会社の実績などを継承することも可能です。これらのことで困りごとがある際には、「廃業支援センター」にご相談ください。廃業を知り尽くしたプロフェッショナルが、経営者に寄り添った丁寧な廃業支援を行います。法人に限らず、小・中規模の事業主様のご相談も受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。