廃業を知る

小売業の倒産の現状とコロナ渦で見えた将来の課題について

小売業 倒産 コロナ
この記事の監修
株式会社リスタートスタイル 代表取締役 / 廃業コンサルタント 西澤 佳男 (にしざわ よしお)

起業3回廃業2回うち民事再生1回、双子のパパ。
ベンチャーの起業・複業・廃業の領域で「社長のサバイバル」を支援しています。

新型コロナウイルスの影響により、さまざまな業界が苦境に立たされています。いまだに収束の兆しは見えず、事業の継続を諦め廃業の道を選ぶ経営者の方も少なくありません。
本記事では、コロナ禍における小売業の現状や、今後の課題について解説します。

小売業の倒産は過去30年で最少に

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猛威を揮い続ける新型コロナウイルスにより、小売業界も多大な影響を受けている、と考える方は少なくないかもしれません。確かにさまざまな業界へ影響を及ぼしているのは事実ですが、小売業においては過去30年で最小の倒産数となっているのです。

東京商工リサーチの発表した「小売業の全国企業倒産件数」によると、2020年における小売業倒産数は前年比14.3%減の1,054件となっています。これは、1991年からの30年間で最小の数値です。
(参照元:https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2020_2nd.html)

なお、2020年における全国の企業倒産状況は7,773件となっており、新型コロナウイルスの影響による倒産は792件とのことでした。

飲食料品を筆頭に小売業の全業種で前年比から減少

東京商工リサーチの発表した「小売業の倒産動向」調査 2020年(1-12月)によれば、全業種において倒産状況が前年を下回る結果となっています。飲食料品小売業においては、もっとも減少率が大きく前年比22.7%となっているのです。
(参照元:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210129_01.html)

織物・衣服・身のまわり品小売業では倒産件数は前年比16.5%減で、機械器具小売業は8.3%減、その他小売業は11.6%減、無店舗小売業は7.8%減との結果です。すべての業種において前年に比べ倒産数は少なくなっていますが、特に飲食料品小売業は大幅な減少を見せています。

あらゆる業界が苦境に陥る中、なぜ飲食料品小売業の倒産件数が減少したのでしょうか。理由としては、国や自治体が打ち出した感染拡大防止を目的とする外出自粛の施策が挙げられます。この施策によって人々は不要不急の外出を避けるようになり、外食をする機会も減少したと考えられます。

これまで外食メインの食生活だった方も、食品を購入して自宅で食べるケースが増えました。こうした巣ごもり需要の増加が、小売店の売上拡大につながったと考えられます。

新型コロナウイルスが小売業に与えた影響

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経済産業省が公表したデータによると、新型コロナウイルスの影響で小売業の中でも明暗がわかれたようです。たとえば、日常生活に必要な食品や生活用品を主力商品として扱うスーパーやドラッグストアなどは、売上が増加しています。

これはやはり、多くの方が感染をおそれて外出を控えるようになったからでしょう。外出を少しでも減らすよう、食品や生活用品をまとめ買いするケースが増えたからだと考えられます。また、同様に家電量販店も売上が増加しています。

一方で、百貨店やコンビニなどは売上が減少しています。百貨店も食品を扱うところはありますが、主力はファッションアイテムやコスメなどです。これらの商品は、日々の生活に必要なものとまではいえません。そのため、外出自粛の影響をまともに受けてしまい、売上が減少したのだと考えられます。

また、「おうち時間」をより快適に過ごせるよう、自炊を始める方も増えました。これも、コンビニの売上が減少したひとつの原因と見られます。さらに、コンビニはスーパーやドラッグストアに比べ店舗は狭く密になりやすい傾向があり、客足が遠のいた可能性もあるでしょう。

小売業の現状と課題

よくも悪くも、新型コロナウイルスは小売業にさまざまな影響を与えました。コロナ禍をきっかけとして、多くの小売店が業務のデジタル化を推進するようになったのです。非接触での接客を実現するため、キャッシュレス決済の導入やオンラインでの商品案内、販売を始めたところも少なくありません。

ライバルたちが次々と変化を続ける中、生き残るためには自社も対応する必要があります。今後は、AIの活用や自動化による業務効率化、ECサイトの展開、人材不足解消の施策なども進める必要があるでしょう。

ただ、業務の自動化や効率化、AIやIoT導入によるサプライチェーン管理は多額の費用がかかります。システムの導入はもちろん、スタッフの育成にも時間とコストを要するはずです。

順調に物事が進めばよいのですが、うまくいくとは限りません。目まぐるしい変化についていけず、廃業を考える企業が増えても不思議ではないでしょう。

小売業が廃業する理由

さまざまな理由が考えられますが、ひとつには業績の悪化が挙げられます。今後業績が回復する見込みがあればまだしも、そうでない場合には多くの経営者が廃業を視野に入れるでしょう。業績悪化に伴いキャッシュフローが悪化し、経営が回らなくなることは珍しくありません。

人手不足も理由として考えられます。現代は働き手の選択肢が多く、魅力的な労働条件を設定しないとなかなか人材を確保できません。小売業において、人材を確保できないのは大問題です。

また、小売店が扱う商品は流行り廃りがあるため、その波に業績が影響されることも少なくありません。流行っているときには恩恵に与れますが、流行が廃れたときは在庫を負債として抱えることになってしまいます。

後継者が見つからないことを理由に、廃業を考えるケースも少なくありません。あとを任せられる人材を育成できていればよいのですが、そう簡単なことではないでしょう。誰にも事業を受け継がせられず、黒字なのに廃業を選択するケースも多いのです。

小売業の廃業理由の多くは一般的な中小企業と大きく変わりません。ただ、小売業特有の廃業理由として挙げられるのが、ECサイトの台頭です。

現在では多くのECサイトが台頭し、外出せずにパソコンやスマホで買い物できる時代になりました。ECサイトは実店舗が不要なため、低コストで運営でき商品の価格も安くできます。そのため、実店舗経営がメインの小売店にとって、ECサイトの台頭は脅威でしかないのです。

小売業の廃業の手続きと注意点

行き当たりばったりに廃業してしまっては、従業員やお客様へ迷惑をかけてしまいます。計画的かつスムーズに進められるよう、まずは廃業までの具体的なスケジュールを立てましょう。

店舗が賃貸物件の場合には、解約時期をベースに廃業スケジュールを組み立てます。6ヶ月後に更新の時期が迫っているのなら、最初の2ヶ月で大家や管理会社、社員、顧客への通知を行い、残りの4ヶ月で在庫処理を考える、といった具合です。

基本的に、小売店の多くは店舗や倉庫に在庫を抱えています。閉店までにすべて完売できるのなら問題ありませんが、そううまくもいかないでしょう。

在庫については、一括で買取してくれる業者もいます。このような専門業者を利用することも検討してみましょう。その場合には、どれくらいの売却額になるのか、どの程度時間がかかるのかを把握しておくことも大切です。

先述しましたが、取引先や顧客、従業員へはなるべく早めに廃業予定を伝えることが大切です。特に、従業員からすると失業の問題が絡むので、トラブルを避けるためにもきちんと段取りを踏むことは重要といえます。

廃業にあたって考慮すべき事柄はさまざまにあります。スムーズな廃業を行うには、プロの業者による支援を受けるのもいいでしょう。
「廃業支援センター」は、廃業のプロフェッショナルがチームを組み、事業に合わせた丁寧な廃業支援を行っています。法人だけではなく、中小規模の事業主からの相談も可能なので、廃業の手続きに悩む方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。
●まとめ
新型コロナウイルスが収束したあとも、小売業界は新たなビジネスモデルに適応する必要があるといわれています。このまま頑張り続けるのもひとつの手ですが、早い段階で見切りをつけ、廃業の選択をするのもひとつの考えかもしれません。
廃業支援センターは、廃業のプロによる丁寧な廃業支援を行っています。経営者の立場になり、そのときどきに応じた最適な支援をしています。
あらゆる規模の企業、個人事業主からの相談にも対応しているため、廃業を少しでもお考えであれば、廃業支援センターへの問い合わせも検討してみてください。

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