製造業の倒産状況は?コロナの影響や倒産理由、今後について知る
- この記事の監修
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株式会社リスタートスタイル 代表取締役 / 廃業コンサルタント 西澤 佳男 (にしざわ よしお)
起業3回廃業2回うち民事再生1回、双子のパパ。
ベンチャーの起業・複業・廃業の領域で「社長のサバイバル」を支援しています。
新型コロナウィルス感染症の影響もあり、現在の企業経営は不況続きで不透明感が漂っています。特に製造業に関しては、コロナ禍の前から問題点が山積みです。今後について考えるためにも、この記事で製造業経営の廃業理由や課題ついて詳しく解説します。
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前年比10%減となった製造業の倒産
東京商工リサーチでは、毎年全国企業倒産件数を調査・公表しています。それによると、2020年(令和2年)の全国企業倒産件数(負債総額1,000万円以上)は7,773件です。中でも、建設業の倒産件数は1,247件と、過去30年間で最も少ない結果でした。
この数字は、調査を始めた1971年以降の50年間では4番目に低い水準でした。8,000件を下回ったのは30年ぶりのことで、バブル期である1989年の7,234件に次ぐ低さです。
製造業はその中で915件と、前年に比べ10.6%減少しています。また、負債総額は2,460億円であり、これも前年に比べて22.5%減少しています。
この傾向は年度別にみても変わりなく、2020年度の企業倒産件数は7,163件、製造業は824件と低い水準でした。また、
参照元:東京商工リサーチ 全国企業倒産状況 2020年 https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2020_2nd.html
新型コロナウィルスが製造業にもたらした影響
2020年の製造業は、倒産件数だけで見ると、堅調のように思われます。しかし、他の数字を見てみると新型コロナウィルスによる悪影響が見られ悲観的なものもあります。
まず雇用は、総務省の発表で就業者が52万人減と、リーマンショック以来の悪化が見られました。その後は内需の思わぬ伸びで復調してきましたが、コロナの影響による失業者は、飲食業の次に製造業の割合が多くなっています。
また、製造業では取引や販促面で大きく影響を受けています。商談数の減少や展示会の延期・中止、新商品発売の延期や製品開発の見直しなど、全体的な営業・販促活動の縮小傾向が見られます。
2020年は国内総生産(GDP)が4.8%減と11年ぶりのマイナス成長でした。製造業でも業況判断指数は低い水準に留まっており、先行きは不透明です。
参照:内閣府 2020年10~12月期四半期別GDP速報 2021年3月 https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf
浮き彫りになった製造業の課題:グローバル・サプライチェーン
コロナ禍により製造業で問題になっているのは、数字上のことだけではありません。これまでのビジネスモデルであったグローバル・サプライチェーンも大きな影響を受けています。
新型コロナの影響下では、海外からの供給が滞り、サプライチェーンそのものが分断される事態となりました。そのため、部品や原材料の調達を海外依存していた企業は大きな打撃を受けています。日本は中国に自動車部品を依存していたため、生産ラインなどに多大な影響が生じてしまいました。また、このことによってグローバル・サプライチェーンにおける問題が改めて浮き彫りになりました。たとえば、需要と生産のタイムラグが生じることで市場に製品が過剰に供給されたり、多くの人がeコーマスへ殺到して、生産供給が追い付かなくなったり、といった事態を招きました。このような問題を解決するためには、全体最適化の視点を取り入れた生産性向上が重要でしょう。
製造業の倒産理由
製造業は他産業と同様に、企業活動に何らかの新型コロナウィルスの影響を受けてはいるものの、2020年の製造業の倒産件数は前年よりわずかながら(0.98%)減少しています。これは、製造業においてはコロナ以上に倒産の要因になるものがあることを示しています。それはどのようなものでしょうか。
ここからは、製造業の倒産と全体状況について解説します。
参照元:東京商工リサーチ 全国企業倒産状況 2020年 https://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2020_2nd.html
大企業は安定しているが、中小企業は減少の一途
中小企業庁による中小企業白書(2020年版)によると、1999年から2016年の18年間、中小企業の件数はずっと減少傾向にありました。特に中規模企業は、この18年間で28%も数を減らしています。
倒産は、近年最も多かった2008年のリーマンショックをピークに、徐々に件数が減少傾向にあります。しかし、倒産件数が大幅に減少しているのは大企業であり、中小企業はほとんど変化がありません。
この傾向は最新版のデータでも変わりはありません。全体的に倒産件数が減少してはいるものの、規模別に見ると、もっとも少ないのは資本金5千万円以上の大企業です。
これは業種別に見ても同じです。製造業の倒産件数も中小企業が多数を占めており、大企業の割合はかなり少ないという状態が続いています。
参照元:中小企業庁 2020年版中小企業白書・小規模企業白書概要 2020年4月 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/PDF/2020_pdf_mokujityuuGaiyou.pdf
参照元:休廃業・解散件数、倒産件数の推移 中小企業庁 2017年版中小企業白書 2018年4月https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b1_2_1_2.html
業績悪化による倒産
業界や業種を問わず、倒産で最も大きい理由は業績悪化です。それは製造業も同じです。
前述した通り、製造業はグローバル・サプライチェーンを基本戦略としています。大企業は海外からの安い部品供給を優先しており、国内の中小企業との取引は縮小しています。
大企業との取引があったとしても、常に安価な海外製品と競争にさらされるため、定期的な値下げ交渉を強いられます。値下げを受け入れた結果、収益が下がり、経営が立ちいかなくなることも考えられます。
特定の取引先に依存するような旧来の経営方法は、連鎖倒産の危険性もあります。今後、製造業の中小企業は、取引先を複数に多様化させてリスク分散を行わなければ、生き残ることは難しいでしょう。
後継者不足による廃業
中小企業の倒産理由でもうひとつ大きいのは、後継者不足です。製造業に限らず中小企業全体に言えることですが、半数以上が後継者に悩んでいます。
中小企業庁の中小企業白書によると、1995年から2018年までの23年間で、経営者の年齢は47歳から69歳へとピークが移動しています。経営者数も1,160万人から885万人に減少しており、後継者なしに消えた企業の多さが見てとれます。
さらに2019年のデータでは、後継者による世代交代が決定した企業と、休廃業・解散を決定した企業の両方が70代の経営者に多いことがわかりました。後継者不足による廃業の波は、今後さらに勢いを増すことが予想されます。
参照元:中小企業庁 2019年版中小企業白書 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/2019/index.html
参照元:東京商⼯リサーチ「2019年「休廃業・解散企業」動向調査」
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200122_03.html
製造業の倒産手続きについて
一般に会社が倒産したというと、会社の資産を全て売り払い、会社そのものが消滅することをイメージしてしまいます。しかし、それは会社の破産であって、倒産ではありません。
倒産には、会社の消滅を伴う破産や特別清算と、会社は残る民事再生や会社更生の二種類が存在します。ただし、どちらを選択したとしても、債権者や裁判所の意向が働きますので、経営者が会社の今後を決めることは難しいでしょう。
経営者みずからが会社をたたむか、存続させるかを決めたい場合には、資金に余裕があるうちに動く必要があります。この場合、M&Aか廃業が主要な選択肢です。ここからは、M&Aや廃業の手続きについて説明します。
M&Aの手続きについて
会社のM&Aを実行すると、経営者には売却益が入ります。また、廃業手続きに必要な手数料もなくなります。従業員も譲渡先の企業で再雇用が期待でき、全社員が同時に失業するというリスクも回避できます。
ただし、M&Aは売買契約と同じなので、相手がいないと成立しません。買い取る企業が現れない場合や、買取額が希望に合わない場合が考えられます。製造業は、売却先の企業が評価しやすいように自社の技術を可視化しておく必要もあります。
中小企業は技術やノウハウが属人化しているケースが多く見られます。そのため、M&Aの際にキーマンである経営者が辞めてしまうことも売却益が下がる要因になりえます。
M&Aは契約相手が決まった後の期間も長く、半年以上かかることを覚悟する必要があります。お金の面で有利な分だけ、デメリットもあることを十分理解しておきましょう。
廃業する場合の手続きについて
廃業は、倒産になる前に会社をたたむ手続きです。廃業する際は、廃業届の提出と清算人による精算作業を行います。上場企業であれば、株主総会を開いて株主からの承認を得る必要があります。その後解散登記と精算登記を行います。
廃業は、その会社の歴史や事業内容、抱えている顧客や取引先などとの関係性によって、複雑な手続きを踏まなくてはいけない場合もあります。「廃業支援センター」では、面倒な廃業手続きをスムーズに行うために、個々の状況に合わせた丁寧なサポートを行っています。また、M&Aの仲介支援や後継者探しの支援など、事業の手仕舞いを経営者の希望する方法で行えるようにサポートしています。
まとめ
製造業における倒産件数は業績悪化や後継者不足による廃業も多く、その大部分は中小企業が占めています。休廃業、解散を決定した企業の経営者は高齢者が多く、今後も後継者不足による廃業は増加すると予測されます。
経営者は、今後の企業経営継続が難しいと判断した場合、廃業するか、M&Aで会社を存続させるかを早いうちから検討に入ることが大事です。
廃業すると決定したら、その後の手続きをできるだけスムーズに行えるように、「廃業支援センター」のような、経験豊富なプロのアドバイスを受けながら手配していくことをおすすめします。また、もし迷われたり悩んだりしている場合でも、経営者に寄り添ったサポートを提供しています。まずはお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。