東京商工リサーチの倒産情報 から導く、2021年倒産・廃業の今
- この記事の監修
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株式会社リスタートスタイル 代表取締役 / 廃業コンサルタント 西澤 佳男 (にしざわ よしお)
起業3回廃業2回うち民事再生1回、双子のパパ。
ベンチャーの起業・複業・廃業の領域で「社長のサバイバル」を支援しています。
昨年と今年は、新型コロナウイルスによって経営に大きく影響した年でした。コロナ禍で事業が苦しくなり、融資を受けた企業も多く存在します。先を見通しづらい現状において、企業の倒産件数や今後の見通しはどうなっていくのでしょうか。今回は2020~2021年の全国倒産件数や、コロナ融資の据え置き期間について詳しく解説します。
Contents
2020年(令和2年)の全国企業倒産件数
2020年における全国倒産企業件数は、意外にも前年を下回る結果が出ました。これは、1971年以降の50年間で4番目の低水準といえます。
東京商工リサーチによると、2020年の全国企業倒産件数は年間7,773件で、前年比では7.2%減でした。また、負債総額は年間約1兆2,200億円で、前年比は14.2%減です。特に倒産件数について、1971年以降はバブル期の1989年の7,234件に次いで、少ない結果であることが判明しました。
コロナ禍であるにもかかわらず、2020年の倒産件数が低水準にあるのは、企業への支援策によるものと考えられています。無利子融資や持続化給付金などの支援が功を奏し、倒産件数が抑制されたことを表しています。
産業別では10産業中6産業で前年を下回る
2020年の全国企業倒産を産業別に見てみると、10のうち6つの産業で、倒産件数が前年を下回る結果が出ました。特に、飲食料品小売業などの小売業は1,054件(前年比14.3%減)で、3年ぶりに前年を下回っています。これは巣ごもり需要による効果であり、倒産件数は1991年以降の30年間のうち最小値です。
ほかにも、卸売業1,065件(同6.8%減)、情報通信業279件(同22.0%減)、建設業1,247件(同13.6%減)、製造業915件(同10.6%減)、運輸業227件(同10.6%減)と、6つの業種でそれぞれ倒産件数が前年を下回っています。
一方で、新型コロナウイルスによる外出自粛で最も影響を受けたのは、宿泊業や飲食業を含むサービス業でした。2020年のサービス業の全国企業倒産件数は2,596件(同1%増)と、5年連続で前年を上回っています。「Go To トラベル」や「宅配デリバリー」など、新型コロナウイルスによる需要減少を抑える施策やサービスが普及したものの、倒産を抑制できなかったことが見受けられます。
ほかにも、農・林・漁・鉱業で109件(同26.7%増)、金融・保険業で30件(同25.0%増)など、4つの業種で倒産件数は前年よりも上回る結果が出ました。
地域別でも北陸・中国地方以外は減少
2020年の全国企業倒産件数を地域別に見てみると、北陸・中国地方を除いた地区において、倒産件数は減少しました。特に北海道(前年比17.4%減)は、1991年以降の30年間でもっとも少ない倒産件数であることがわかりました。
ほかにも、東北(同12.3%減)や関東(同9.6%減)などを中心とした7地区では、コロナ禍においても倒産件数は減少傾向にあります。
反対に、2020年に倒産件数が増加したのは中国地方(同2.5%増)のみです。北陸地方は前年と同じ倒産件数で変わらず、唯一中国地方が3年連続で前年を上回っています。
期限が迫るコロナ融資の据置期間、2021年はどうなる?
実は、2021年はコロナ融資の返済期限が迫る年です。そのため、2021年以降はコロナ融資の返済に苦しむ企業が増えることが予想されます。そこで、元本の返済が猶予される「据え置き期間」は、今後どのようになるのでしょうか。
2月の倒産件数は過去50年で最小値に
2021年の倒産件数は、過去50年で最も少ない結果が出ましたが、一方で新型コロナウイルス関連による倒産は過去最多で、引き続き予断を許さない状況といえます。
東京商工リサーチが調査した「全国企業倒産状況」によると、2021年2月の倒産件数は446件で、前年同月比は31.5%減です。これは、1990年の448件以来、最も少ない倒産件数です。政府の新型コロナウイルスに対する支援策が、一定の成果を出していると考えられます。
一方で注意したいのは、「新型コロナウイルス関連倒産」の件数です。新型コロナウイルス関連倒産とは、倒産の原因が新型コロナウイルスであることを、当事者または代理人(弁護士)が認めたものを指します。また、新型コロナウイルスが原因で法的整理、または事業停止となった場合も新型コロナウイルス関連倒産として扱います。
実際に、2021年2月の新型コロナウイルス関連倒産の件数は、2021年2月で114件です。2020年10月の105件よりも多く、件数が月間最多として更新しました。
また、2021年2月全国倒産件数に占める、新型コロナウイルス関連倒産の割合は約25%という結果が出ています。このように倒産件数は減少していても、実は新型コロナウイルスが原因の倒産は増加傾向にある点には要注意です。
倒産が減少しても予断は許されない理由
2021年2月の倒産件数は前年比で減少しています。このようにコロナ禍においても政府の支援策などによって、ある程度倒産件数を抑制できていることがわかります。
しかし、倒産件数が減少していても、2021年は油断できる状況ではありません。なぜなら、コロナ融資を受けた企業の返済が、ちょうど2021年から始まるケースが増えるからです。
コロナ融資の大半は、元本返済の猶予期間が1~2年で設定されています。新型コロナウイルスによって、2020年に融資を受けた企業も多く、2021年春から返済期限を迎える企業は多くあると予想されます。コロナ融資を借り始めた2020年は何とかなる状況であっても、2021年は返済に苦しむ企業が増えるでしょう。
たしかに返済期限を迎える企業には、2度目以降に再度融資を受ける「追加融資」の選択肢もあります。しかし、以前から融資を重ねたことで借入過多になり、返済を諦めて倒産や廃業を選ぶ「あきらめ型」が増えることも考えられるのです。
コロナ融資の期限を延長する動きも
新型コロナウイルスの影響に鑑みて、金融庁はコロナ融資の期限延長の方針を固めました。具体的には、元本返済を猶予する据え置き期間の延長が金融庁の目的です。
先に述べたとおり、2021年にはコロナ融資の返済期限を迎える企業が多くなると予想されます。そこで、返済期限を迎える企業に対して、資金繰りが苦しい企業の倒産を抑制する狙いがあるのです。
現在、コロナ融資によって何とか命綱を握っている、いわば「ゾンビ企業」が多く存在します。返済期限が1年のコロナ融資は多く、2021年は返済開始の年となります。そのため、2021年は返済に苦しむゾンビ企業が倒産に追い込まれる状況も予測できるのが実際のところです。
まとめ
コロナ禍においても、実は数字で見てみると倒産件数はそれほど増えていません。これは政府による融資や支援策などが効果を出しているといえます。
一方で、2021年はコロナ融資の返済期限が始まる年です。今まで何とか資金繰りを施してきた企業にとっても、今後はいっそう苦しい状況になることが予想されます。どうしても返済できない場合は、廃業も手段の1つです。
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