廃業を知る

宿泊業の現状と課題。コロナ後を見据え倒産や廃業も検討すべき?

宿泊業の破産

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、宿泊業は大きな打撃を受けています。この記事では、宿泊業の倒産・廃業を考えている経営者に向けて、宿泊業の現状と課題をまとめました。そのほか、廃業手続きに関する情報やM&Aの選択肢についても取り上げています。

宿泊業の倒産が7年ぶりに100件台に

東京商工リサーチが発表した「宿泊業の倒産動向」調査によると、2020年(1-12月)の倒産件数は118件でした。前の年と比べて、1.5倍も増えています。倒産件数が100件以上になったのは2013年以来です。

新型コロナによる影響を要因とした倒産は、宿泊業の約半数にものぼりました。これは他の業種と比べても割合が高くなっています。

出典元:株式会社東京商工リサーチ/宿泊業の倒産動向」調査 2020年(1-12月)https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210112_01.html

宿泊業で新型コロナ要因の倒産が増えた理由

宿泊業の破産
では、なぜ宿泊業に新型コロナの影響が強く表れたのでしょうか。原因としてまず考えられるのは、外国人の入国制限や緊急事態宣言を受けた外出の自粛、偏りがあった「GoToトラベル」の効果、といったものです。

外国人の入国制限によって海外からの旅行客が大幅に減少し、見込んでいたインバウンド需要がなくなりました。また、国内でも緊急事態宣言の発出を受けて不要不急の外出が制限されたため、宿泊客が大幅に減少します。

冷え込んだ需要を取り戻すために政府が実施した「GoToトラベル」キャンペーンも、集客効果は一部の宿泊施設に限られていました。前述の東京商工リサーチによる調査でも、人気のある観光地や宿泊施設に利用客が集中し、恩恵に与れなかった宿泊施設が出ていると分析しています。このように、宿泊業は新型コロナと国の政策に左右されて倒産件数が増えたといえるでしょう。

宿泊業が廃業する理由

宿泊業の破産
実際に宿泊業者が廃業を選択した理由としては、新型コロナの影響のほかに、ホテルの増加や改装資金の不足、後継者の不在などが考えられます。

宿泊業では近年の高まるインバウンド需要に合わせたホテルの増加を受けて、宿泊料金は下降傾向にありました。その結果、営業収益が減少し廃業の道を選択しています。

また、老朽化した施設の改装資金を工面できなかったり、借入金の引き継ぎなどを理由に事業承継が進まなかったりしたケースでも廃業が選ばれていました。このような原因に追い打ちをかけるように、新型コロナの影響でインバウンドの減少が決定打となり、業績不振・債務超過にあった宿泊業者が次々と廃業に追い込まれています。

出典元:日本政府観光局(JNTO)/「国籍/月別訪日外客数(2003年~2021年)」https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf

出典元:みずほ総合研究所/みずほリポート「ホテル市場の変調の兆しをどうみるか 」https://www.mizuho-ir.co.jp/publication/mhri/research/pdf/report/report18-0829.pdf

コロナ禍で見えた宿泊業の現状と課題

新型コロナの流行によって、宿泊業には主に2つの課題が見られます。ひとつは休業できない理由がある、もうひとつは新しいアイデアの必要性です。以下に詳しく解説します。

休業したくてもできないビジネスホテル

高級ホテルが実施した宿泊料の引き下げにより、多くのビジネスホテルにおいて集客が減少しました。ビジネスホテル自体も集客のために宿泊料の引き下げ競争が起き、1泊2000円台のホテルさえ出てくる始末です。このような値下げから、ビジネスホテルの収入がより減ることとなりました。

そのような状況の中、赤字を出しても休業に踏み切れない宿泊業者が多く存在しています。その大きな理由して、予約サイトの順位が低下することへの懸念があります。予約サイトの掲載順位を左右する主な要素としては、「サイトに振り分ける部屋数」「過去1カ月の売上」「口コミ」があります。ホテルが一時的に休業すれば、再開した時の掲載順位が下がってしまうことが考えられます。そのため、ビジネスホテルは休業を選ばずに営業を続ける選択を余儀なくされているのです。

宿泊業の復活には新しいアイデアが必要

新型コロナの感染拡大を受けて実施された緊急事態宣言の発令や入国制限によって、日本を訪れる外国人の数が大幅に減少しました。コロナ禍ではインバウンド需要まったく当てにならなくなりました。このような状況を打開するために、新しいアイデアを取り入れた経営が試されています。

帝国ホテルでは、新しい取り組みとして「サービスアパートメント」を開始しました。主にビジネス利用を想定した宿泊サービスで、広さ31㎡の部屋を5泊15万円、30泊36万円(ともにサービス料・消費税込)で提供しています。

このように、宿泊業では新たなサービスを打ち出して従来とは異なるターゲット層を呼び込んだり、付加価値を足して一部屋当たりの単価を上げたりするなどの、コロナ禍に対応した宿泊サービスの創出が求められています。

出典元:帝国ホテル東京/サービスアパートメントhttps://www.imperialhotel.co.jp/j/tokyo/special/serviced_apartments/

宿泊業における根本的な経営戦略見直しの必要性

コロナ禍の長期化が予想される中、宿泊業を存続するためには、経費削減や売上の向上を中心とする根本的な経営戦略の見直しが必須です。

経費削減の面では、売上に対して特に比率の高い人件費や食材費の見直しが必要です。人件費は、客室の稼働率と予想の来客数に応じたシフト構成や、宿泊数に応じた作業人数・時間の調整、複数の部門を受け持つマルチタスク化など実施して、人件費の削減に努めましょう。食材費は、標準原価と実際原価の差額を把握し、日ごとの売上高と仕入額を出しておきます。また、食材・飲料・売店ごとに仕入れを管理し、厨房の関与を切り離した仕入れに変更しましょう。そのほかの経費では消耗品・リネンなどの見直しが必須です。また、固定費の顧問料や保守管理費・保険料・リース料などは契約の更新に合わせて、費用を抑えられる代替先を探しましょう。

売上の向上戦略では、集客ターゲットを国内の個人に絞ります。休暇や仕事、少人数の食事といった利用に適した場を提供すれば、コロナ禍でも売上の向上につなげられるでしょう。長期的な売上向上を考えた場合、新型コロナの収束を見越した準備も必要です。比較的感染者数の少ないアジア地域からのインバウンド需要の回復を想定した準備も視野に入れることが求められます。

宿泊業を廃業する手続き

宿泊業の廃業手続きは個人と法人で異なります。事業形態ごとの廃業手続きを紹介した上で、M&Aの選択肢についても解説します。

個人の廃業手続き

個人が宿泊業を営むケースにおいて廃業する場合、管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」「所得税の青色申告取りやめ届出書」を提出する必要があります。課税事業者の場合は「事業廃止届出手続」、給与支払者の場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」の提出も合わせて必要です。保健所へは「旅館業廃止(停止)届」を出します。以上の届出を定められた期間内に済ませると、廃業手続きは完了です。

法人の廃業手続き

宿泊業を営む法人の場合、煩雑な手続きが必要となります。大まかな流れは、「取引先や従業員などへの通知・説明」「株主総会での決議」「各種届出・申請手続き」の順に行います。法人の廃業手続きでは個人の場合と違い、官報公告への解散公告や各種登記申請も必要です。手続きを終えるまでには時間がかかる為、綿密に計画を立てる必要があります。また、手続き費用や専門家への報酬、従業員への退職金の支払いといった出費も考えなければいけません。

M&Aの選択肢も視野に入れる

新型コロナの影響から宿泊業の廃業を検討する方は、M&A(合併・買収)も選択肢に加えるといいでしょう。コロナ以前に比べると安価になった売却案件を戦略的にM&Aを進める事業者が増えました。買収側の事業と宿泊業を組み合わせたり、コロナに対応した宿泊形態に変えたりして、コロナ禍での事業継続に取り組む買い手が現れています。廃業の道しかないと思い込まずに、売却の選択肢も検討しましょう。

廃業を選ぶなら、「廃業支援センター」への相談をおすすめします。「廃業支援センター」は、専門のコーディネーターが士業(弁護・税理・会計士など)と協力しチームによる廃業支援を提供する会社です。M&Aや後継者探しの支援も行っているため、事業・雇用・取引契約の引き継ぎも視野に入れられます。まずは「廃業支援センター」までお問い合わせください。

まとめ

コロナ禍の宿泊業が置かれている状況や課題を取り上げました。コロナ禍でも、多くの経営者は経費の削減や新しいアイデアを活かしたサービスの提供などで事業を継続させています。しかし、人の移動が制限される状態は、新型コロナの流行が収まるまで継続されるでしょう。競合先の増加や資金不足などで廃業を選ぶ宿泊業者も少なくありません。廃業を検討する際は事前に計画を立てるほか、M&Aも選択肢に入れることをおすすめします。

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