廃業とM&Aを比較|メリット・デメリットと重要ポイントを解説

- この記事の監修
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株式会社リスタートスタイル 代表取締役 / 廃業コンサルタント 西澤 佳男 (にしざわ よしお)
起業3回廃業2回うち民事再生1回、双子のパパ。
ベンチャーの起業・複業・廃業の領域で「社長のサバイバル」を支援しています。
経営者が長く続けてきた会社経営から引退する場合、できれば大事に育ててきた事業を承継したいと考えるものですが、最近では後継者不足の問題によって仕方なく廃業を選択する人も増えています。
しかし、事業にまだまだ将来性がある場合は、業績を残している事業を他企業に譲渡するM&Aで、多くの資産を残した上で引退することもできます。
2020年は新型コロナウイルスの流行によって世界的な経済不況に陥り、これまで経営が安定していた企業ですら廃業に至るケースが増え、より廃業やM&Aに注目が集まっています。
この記事では、経営者が引退する際の選択肢となる「廃業とM&Aのメリット・デメリット」や「注目したい重要ポイント」をご紹介していきます。
Contents
廃業とは?
廃業は会社をたたむ時に使われる言葉ですが、正確には経営者が能動的に事業を終わらせる場合に用いられる手続きを指します。
債務超過によって破産せざるを得ない状況の倒産とは違い、経済的な事情以外で事業を終わらせる時にも廃業が選ばれます。
また、複数の事業を展開している場合は将来が不安な事業のみを廃業させて、一部の事業のみ事業承継するケースもあります。
廃業は会社の解散と清算が必要となり、清算後に残った財産は株主へ配当されます。清算決算報告書が承認されることで会社は消滅し、最後に清算結了登記を済ませて廃業手続きが完了します。
廃業を考える理由
廃業と聞くと会社の経営不振などをイメージする方も少なくありませんが、理由はそれだけでなく、主に以下のような理由で廃業が選択されます。
- 業績が伸びず、会社に将来性がない
- 社長の年齢が高齢となった
- 会社の後継者が見つからない
- 後継者はいるが事業承継が難しい
- 社長が家族の看護や介護等の問題で事業に専念できなくなった
中でも社長が高齢になって今までのように会社の舵を取れなくなったという理由で廃業を決断するケースは多く、高齢化社会での後継者問題は、近年非常に注目を集めています。
廃業のメリット
事業のひとつの終わらせ方である廃業には、以下のようなメリットがあります。
- 社会的不名誉にあたらない
- 倒産よりも従業員や取引先にかける迷惑が少なくなる
- 会社の資産の一部を守れる可能性がある
- 会社の経営者というプレッシャーから解放される
廃業はあくまで経営者が自主的に決めたことであり、債務超過による倒産のような社会的不名誉にはなりません。また、事業時の経営状態によっては一部の資産が残る可能性もあります。
ベテラン経営者の場合、長年背負ってきた経営者の責任から解放されることで精神的に楽になるというメリットもあり、事業終了を意味する廃業にもポジティブな側面があるといえます。
廃業のデメリット
廃業のデメリットは、手続きを始める前に必ず理解しておかなければなりません。
- 従業員が職を失う
- 取引先とのネットワークを失う
- 事業の許認可を失う
- 資産の売却価格を安く見積もられる
- 黒字清算ができない可能性がある
長年同じ顔と仕事を続けてきた経営者は、従業員が職を失ってしまうことに胸を痛めることでしょう。また、これまで努力して築き上げてきた取引先とのネットワークやコネクションも失うことになります。
廃業は清算を経て資産が残れば株主に配当される形になりますが、そもそも資産が全て残るとは限りません。債務整理の過程で債務超過の見込みとなった場合、破産手続きに進んでしまう可能性があります。
廃業手続きをできる限り穏便に済ませたい場合は、廃業に精通した専門家にアドバイスやサポートを求めることをおすすめします。
M&Aとは?
高齢による体力の衰えや病気を理由に廃業を考えている経営者には、M&Aという選択肢もあります。
「Mergers and Acquisitions(合併&買収)」を略したM&Aは、企業の吸収合併、株式譲渡、事業譲渡、会社分割などを行う手続きであり、経営者が大事に育ててきた事業を消滅させずに合併・買収で生かすことができます。
M&Aは、後継者が見つからない場合の解決策になる他、合併によって会社のさらなる成長が見込める場合、経営再建を目的として活用することができます。
M&Aのメリット
M&Aで事業の譲渡を行う場合、売り手となる経営者には以下のようなメリットがあります。
- 後継者問題が解決される
- 従業員の雇用を確保できる
- 事業継続と拡大に期待できる
- 廃業費用がかからない
- 創業者に利益が発生する
最大のメリットは後継者問題を解決できるという点であり、充分な経営基盤を持った企業に事業を譲渡することで事業のさらなる成長と拡大にも期待ができます。
事業のノウハウを持つ従業員も、失業せずに譲渡先の企業で雇用を確保してもらえるため、廃業や倒産よりも売り手経営者にかかる精神的な負担は軽くなります。
また、廃業手続きで発生する設備・機械処分費用や原状回復費も、M&Aの契約条件次第でなくなるというメリットも生まれます。
事業の創業者だった場合は最大限の報酬が支払われるため、廃業手続きにはない利益が発生するのがM&Aの特徴です。
M&Aのデメリット
経営者という立場からの引退をM&Aという形を取って終わらせる場合、デメリットも十分に理解しておかなければなりません。
- 買い手が見つからない可能性がある
- 希望の譲渡額に満たない可能性がある
- シナジー効果が生まれるまで時間がかかる
- 従業員の雇用体制や労働条件の変更になる
- 取引先や関係者から理解を得られない場合がある
M&Aはそもそも買い手が見つからなければ成立しない手続きであり、買い手が見つかったとしても希望の譲渡額に満たないケースが多々あります。
また、これまでお世話になってきた取引先や関係者から理解を得られない可能性もあり、トラブルになって契約が打ち切られるリスクも生じます。
廃業とM&Aの重要ポイントを比較
最後に、廃業とM&Aのそれぞれの重要ポイントを比較しながらご説明していきます。
事業を辞めるか承継させるか悩んでいる方は参考にしてみてください。
手続きで生まれる利益
廃業もM&Aもこれまで事業で得てきた収入がなくなるため、とにかく手元に多くの資産を残して引退したいと思う人は多いでしょう。
廃業の場合、利益が生まれるかどうかではなく、資産が残るかどうかという見方になります。手元に残る資産は会社の経営状態次第で大きく変わり、多額の債務を背負っていた場合は資産が全く残らないという可能性もあります。
一方でM&Aは、事業に将来性や魅力的な価値があれば3年から5年分の利益を想定した取引価格になる事もあり、経営者引退後もしばらくは困らない多くの資産を残せる可能性があります。
M&Aで利益を最大化させたい場合は、事業の価値をしっかり評価してくれる譲受先を見つける必要があるため、まずはマッチングをサポートしてくれる専門業者探しから始めましょう。
従業員と取引先への対応
経営者であれば、これまで一緒に頑張ってきた従業員にできるだけ迷惑をかけずに事業から引退したいと考えるでしょう。
全ての事業を廃業する場合、残念ながら会社は解散となり、従業員は失業することになるため、彼らが次の就職先を見つけるために何らかのサポートをしてあげる必要があります。
一方でM&Aは譲受先・合併先の企業で雇ってもらうことが可能なため、従業員の将来を考えた場合の最大限の配慮といえます。
注意しなければならないのが、取引先との関係です。
経営者が変わる事により取引関係に変改が生ずる事が考えられます。信頼してきた企業に裏切られたと感じる取引先もあります。これまでたくさん協力してもらった取引先の対応は精神的に大きな負担となりますが、代理弁護士がいれば仲介に入ってもらうことができます。
M&Aでは、譲受企業が新たに事業を受け持つことになりますが、M&Aでも全ての取引先が納得するとは限らないので注意しましょう。
手続きの成功と失敗
事業を自主的に消滅させる廃業と、相手企業に譲渡、または合併させるM&Aは全く別の手続きですが、後継者問題に悩んでいる経営者はどちらの選択肢が良いか悩むこともあります。
M&Aで買い手が見つかることで大事に育ててきた事業を消滅させずに済みますが、そもそも相手先が見つからなければ何も始まらないのがM&Aです。
その点、廃業は経営者の意志があれば手続きを進行させることができるため、1日でも早く事業を辞めたい高齢の経営者は、廃業の方が精神的に楽になれる日が早く訪れる可能性が高くなります。
もちろん廃業にも失敗はあり、株主総会で可決を得られなかったり、債務超過によって破産手続きに移行する可能性もあります。
今後の将来を考えた場合、どちらの手続きを選んだ方が幸せになれるのかをしっかりと考え、後悔のない選択をしましょう。
廃業かM&Aで悩んでいる場合の相談先
事業の経営から引退するという決断に至った経営者や企業にはそれぞれの背景があります。
「本当にこのまま廃業していいのか?」と疑問を持つ人も少なくありませんが、悩んだ場合は廃業とM&Aに精通した専門業者からアドバイスを受けることで納得できる答えが見つかることもあります。
相談先は弁護士や税理士、コンサル会社など複数ありますが、廃業とM&Aのどちらに対しても専門知識とノウハウを持つのが「廃業支援センター」です。
「廃業支援センター」が悩める経営者に選ばれる理由は、実際に事業の廃業を経験し、廃業支援やM&Aの支援例も持つ廃業コーディネーターに、廃業支援を受けられるという点です。
また、経営状態が悪い場合でもM&Aで成功する可能性があるかどうかを判断し、M&A仲介会社と連携をしながら最適な取引会社探しをお手伝することも可能です。
士業専門家以外にも廃業支援センターのように廃業のプロフェッショナルがトータルサポートを行っているところもあります。廃業かM&Aか、悩んだ場合の相談先をしっかりと厳選することをおすすめします。
まとめ
廃業とM&Aの特徴やメリット・デメリットをご紹介しました。
経営者が能動的に事業を辞めることを決める廃業は、会社が経済的に困窮していたり、経営者が高齢等を理由に引退を考える場合に検討する手続きです。
廃業の場合、多方面に債務を抱えていても会社の解散と清算を経てきれいさっぱり事業を消滅させることができますが、会社や事業に魅力的な価値がある場合、M&Aで他の企業への事業譲渡や合併を行って資産をできる限り残すこともできます。
廃業かM&Aのどちらを選んでいいか悩んだ場合は、廃業コーディネーターが在籍する「廃業支援センター」にご相談することをおすすめします。
廃業コーディネーターはヒアリングを通して経営者の経営事情をしっかりと理解し、お客様の理想とする引退を実現できるように的確なアドバイスをすることができます。
廃業、M&A両方の手続きに確かな経験と実績を持つ、信頼と安心の専門業者をお探しの場合は是非「廃業支援センター」までご相談ください。