廃業を知る

廃業の前に考えるスモールM&Aで押さえておくべき4つのポイント

スモールM&A

M&Aというと大企業の話だと思っていたのは昔の話。スモールM&Aに特化したプラットフォームも登場しており、ユーザー数もここ1年で倍増する等、最近では中小企業を対象にした「スモールM&A」の認知度が高まっています。廃業を考える前に第三者への承継(M&A)を検討して、あなたにベストの策を考えましょう。この記事では、スモールM&Aの基礎知識をと、検討するときのポイントをご紹介していきます。

休廃業・解散の状況

休廃業の増加
東京商工リサーチ「2020年「休廃業・解散企業」動向調査」によると、年々休廃業・解散件数が増加しており、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり5万件に迫る勢いで過去最多を記録。これにより、約12.6万人以上の従業員が影響を受けました。しかも、6割超が黒字にもかかわらず、後継者不在、先行き不透明等の理由で休廃業・解散の道を選んでいます。
しかしながら、1社の廃業により連鎖的に様々な営業を及ぼします。従業員は職を失い、取引先の業績にも影響を与えるでしょう。今後、廃業が増えていくと、日本経済にも大きな影響を与えかねないのです。
そこで考えていただきたいのがM&Aという選択肢です。

スモールM&Aとは?

 

一般的に中小企業のM&Aは「スモールM&A」と呼ばれます。はっきりとした定義があるわけではなく、売上高が1億円未満の企業を対象としたM&A、譲渡価額が1億円以下のM&A等と言われていますので、小規模事業者・中小企業を対象としたM&Aのことだとお考えください。これまでM&Aと言えば、ニュースで見る大企業のM&Aのイメージでした。最近では後継者難の解決策として中小企業のM&Aが期待されており、件数も増加傾向にあります。
廃業した場合、従業員の雇用が失われ、取引先にもご迷惑をお掛けする可能性があります。後継者不在で廃業を考えている企業の6割超が黒字というデータもあるとおり、廃業予定の企業の多くは利益を出している優良企業です。その優良企業の経営資源やノウハウを引き継がずに廃業を選択してしまうのは、日本経済の損失に他なりません。M&Aで後継者問題を解決した先には、事業の成長の可能性もあります。廃業を検討する前に、経営資源やノウハウ、従業員が引き継げるスモールM&Aをぜひ検討していただきたいと思います。

M&Aのメリット・デメリット

M&Aのメリット・デメリット

まずはM&Aのメリットとデメリットを確認しましょう。

M&Aのメリット

・後継者問題が解決される
・従業員の雇用を確保できる
・事業継続と拡大に期待できる
・廃業費用がかからない
・創業者に利益が発生する

最大のメリットは後継者問題が解決し、事業が継続できる点です。そのため、従業員の雇用も継続され、引継ぎ後に事業拡大も期待できます。また、廃業にかかる設備・機械処分費用や原状回復費がかからず、M&Aの条件次第では手もとに残る資金が多くなる可能性もあります。

M&Aのデメリット

・買い手が見つからない可能性がある
・希望の譲渡額に満たない可能性がある
・シナジー効果が生まれるまで時間がかかる
・従業員の雇用体制や労働条件の変更になる
・取引先や関係者から理解を得られない場合がある

M&Aは買い手が見つからなければ進みません。必ずしも希望する時期までに買い手が見つからないことがあります。また、買い手は少しでも安く譲り受けたいと考えるものです。買い手が見つかったとしても、条件が希望に満たないケースも散見されます。

スモールM&Aを検討するときのポイント

廃業を計画的に進めるのと同じように、スモールM&Aも少しでも有利に売却できるよう計画的に考えて進める必要があります。

ポイント1: 分散株式の対策

業歴が長い企業ほど、株式が分散して少数株主が多数いるケースが見られます。これを分散株式と呼びます。株式が分散する理由は様々ありますが、よくあるケースは2つです。
1つ目は、1990年の商法改正以前には7人の発起人が必要だったために、名義を貸して株主となっているケースです。創業時の出資者が真の株主なので、真の株主に名義変更をしておくことで解決します。
2つ目は、オーナー一族の相続により、ほとんど会ったこともない親戚にまで株式が渡っているケースです。
株主が多ければ多いほど、説明の手間がかかり、反対されるリスクも付きまといます。経営者との関係性が薄いほど、配当などの金銭的要求が強くなったり、いわゆるモノ言う株主になって、揉めることもしばしばあります。こうなる前に、①株式を集約する、②株主との関係性構築、等の対策を取っておく必要があります。

ポイント2:コンプライアンス遵守

コンプライアンス違反には要注意です。様々な法令に違反すると、譲渡価額の減額要因にもなりかねませんし、最悪の場合は売却ができなくなることもあります。従業員への残業代の未払いや、社会保険料の滞納等が発覚して問題になるケースがよくあります。日頃から法令順守を意識することで、M&Aを検討するときにもスムーズに進められます。
また、事業を実施するにあたって必要な契約(取引先との契約内容や契約書の有無等)が不利な内容になっていないか、想定外の内容が入っていないかを管理しておきましょう。中小企業の場合、長年の取引がある取引先との契約書がないケースが散見されます。契約書を交わしていない場合は、条件を明確にして締結しなおす必要があります。契約書がある場合でも、極端に不利な条件になっている場合は譲渡価額の減額や破談の要因になりかねません。日頃から専門家のリーガルチェックを通すようにした方が良いでしょう。
取引先との契約書の「チェンジオブコントロール条項」の内容によっては、会社のオーナー変更で契約が引き継げないケースもあります。M&Aでは取引先との契約が引き継げることを前提条件とする場合が多いので、専門家を交えて現在の契約内容はしっかり確認してください。
従業員との雇用契約書がない、残業代の未払いがある、社会保険料・雇用保険・労災保険の未納がある、というケースもよく聞きます。株式譲渡の場合は、支払い義務が会社にありますので、当然ながら譲渡価額の減額要因になります。M&Aの後に発覚した場合は大問題になりますので、あらかじめ整理しておきましょう。

ポイント3: 経営改善に取り組む

M&Aで譲渡を検討するのであれば、少しでも業績を改善させる努力が必要です。当然ながら黒字経営の方が高い価額で売却できますので、クロージングするそのときまで少しでも業績は改善させた方が売り手は有利に話を進められます。改善が難しい場合でも、現在の業況になった理由や改善ポイントを明確にしておくことで、それを解決できる譲受企業が現れる可能性もあります。
また、黒字経営の方が買い手は見つかりやすいのですが、赤字だからといって買い手が見つからない訳ではなりません。御社の強みを評価され、赤字でも成約するケースもありますので、自社の強みを分析し、把握しておくことが大切です。

ポイント4:情報の取り扱いに注意

売り手の経営者で良くあるのは、少しでも有利な条件を引き出そうとして、複数のM&A仲介会社に相談してしまうケースです。確かに、たくさんの買い手候補の中から、一番高値を提示した企業と交渉したいと思うのが人間の心理です。
しかし、M&Aでは情報管理が非常に重要で、交渉をしていることが広まると、M&Aで大きな影響を受ける利害関係者(取引先、従業員、役員、株主、金融機関等)から横やりが入り、交渉が破談になってしまうこともあります。売り手の経営者があちこちに話してしまうのももっての外です。複数のM&A仲介会社に依頼すると、情報漏洩のリスクが高まり、ご自身が不利になる可能性も否定できません。
仲介会社との契約には「専任」と「非専任」があります。非専任契約の場合は他の仲介会社とも契約が可能ですが、専任契約の場合は他の仲介会社との契約はできません。まずは、信頼できるM&A仲介会社を1社選び、相談を進めることをお勧めします。

まとめ

M&Aなんて自分には関係ないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。「スモールM&A」という言葉が徐々に市民権を得てきましたが、選択する方はごく一部です。どちらがご自身の目指す引退の理想像に近いか、引退後の理想を描き、冷静に比較検討して最善の策を選択していただきたいと思います。どちらを選択していいか迷われている場合は、廃業支援センターにご相談ください。

著者プロフィール

木下綾子 キノシタアヤコ 大学院修了後、大手電機メーカー2社で組み込みソフトウェア開発に約9年従事。2008年のリーマンショックをきっかけに、中小企業診断士の受験を始める。2012年度に中小企業診断士試験合格、2013年4月登録。 2014年、中小企業診断士として独立開業。2015年3月に株式会社ステラコンサルティングを設立。 経営改善・事業再生を中心に企業支援を行い、支援先企業は30社を超える。出口戦略としてM&Aのアドバイザリー業務も手掛け、成約実績も多数あり。また、公的機関で医工連携コーディネーター業務にも従事し、医療機器開発支援も行う。 2019年に銀座のネイルサロンを買収し、経営している。 Lumiena Ginza https://lumiena.jp/

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